ケリー基準の解説
ケリー基準は1956年にジョン・ケリーが開発した数学的公式で、長期的な資産成長を最大化する最適なベット量を計算します。Polymarket予測市場での活用方法を完全解説します。
f* = 最適ベット比率 | b = 純オッズ | p = 勝率 | q = 敗率(1-p)
ケリー基準を計算してPolymarketで適切な取引をしましょう
Polymarketを始める →ケリー基準の基本概念
ケリー基準の核心は「エッジ(優位性)に比例してベットする」という原則です。エッジが大きいほど多くベットし、エッジがない場合はベットしません。
Polymarketでのオッズ計算
市場価格p_mからの純オッズの計算方法:
| 市場価格 | 純オッズ(b) | 例 |
|---|---|---|
| 20セント | 4.00 | 低確率、高リターン |
| 33セント | 2.03 | アンダードッグ |
| 50セント | 1.00 | 五分五分 |
| 67セント | 0.49 | 本命 |
| 80セント | 0.25 | 強い本命 |
実際の計算例
資金: $1,000 | 自分の予測勝率: 65% | 市場価格: 50セント
b = (1 - 0.50) / 0.50 = 1.0
f* = (1.0 × 0.65 - 0.35) / 1.0 = 0.30 = 30%
最適ベット額: $1,000 × 30% = $300
分数ケリーの推奨
実践では完全ケリーではなく分数ケリーを使用することが推奨されます。
| ケリー分数 | スタイル | 推奨理由 |
|---|---|---|
| 25%ケリー | 保守的 | 確率推定の誤差対策 |
| 50%ケリー | 標準 | バランスが良い(推奨) |
| 100%ケリー | 積極的 | 確率が非常に正確な場合のみ |
ケリー基準が目指しているもの
ケリー基準を正しく使うには、まず「何を最大化しているのか」を押さえる必要があります。最大化しているのは1回あたりの期待値ではなく、資金を何度も賭け続けたときの複利成長率です。
この違いは重要です。期待値が最大になる賭け方と、長期の複利成長が最大になる賭け方は一致しません。全額を賭ければ期待値は最大になりますが、一度の敗北で資金がゼロになり、以降の成長機会を永久に失います。ケリー基準はこの破産を避けながら成長率を最大化する解として導かれています。
| 賭け方 | 1回の期待値 | 長期の成長 | 破産リスク |
|---|---|---|---|
| 賭けない | ゼロ | ゼロ | なし |
| ケリー基準 | 正だが控えめ | 最大 | 理論上なし(連続賭けの場合) |
| ケリーの2倍 | より大きい | ゼロ(長期的に破産) | きわめて高い |
| 全額 | 最大 | ゼロ | ほぼ確実に破産 |
この表の3行目が重要です。ケリー基準を超えて賭けすぎると、期待値は上がるのに長期の成長率は下がります。これを「過剰賭け」と呼びます。多くの人が「もっと赌ければもっと増える」と考えるところで、実際には逆のことが起きます。
エッジ(優位性)を数字で測る
ケリー基準を計算するには、自分の推定確率と市場価格の差を数値にする必要があります。この差をエッジと呼びます。
| 自分の推定確率 | 市場価格 | エッジ | ケリー比率の目安 |
|---|---|---|---|
| 55% | 50セント | +5ポイント | 約10% |
| 60% | 50セント | +10ポイント | 約20% |
| 65% | 50セント | +15ポイント | 約30% |
| 70% | 50セント | +20ポイント | 約40% |
| 55% | 30セント | +25ポイント | 約36% |
注目すべきは最後の2行です。同じ15ポイントのエッジでも、市場価格が低いほど推奨比率が大きくなります。これは低い価格ほど当たったときの配当が大きいためで、純オッズ b が大きいほど分母の影響が小さくなるからです。
ハーフケリーが推奨される理由を数値で見る
理論上は完全ケリーが最適ですが、実践ではハーフケリーが推奨されます。理由は単純で、最適性の前提が壊れるからです。
| 前提 | 理想 | 現実 | ズレの影響 |
|---|---|---|---|
| 確率の精度 | 正確にわかっている | 見積もりに誤差がある | 過大評価→過剰賭け→成長低下 |
| 賭けの独立性 | 互いに独立 | 関連マーケットが共存する | 集中リスクが想定より大きくなる |
| 賭けの回数 | 無限に繰り返せる | 有限(资金も寿命もある) | 下振れに耐えられない |
| 賭けの大きさ | 連続的に調整できる | 最小単位とスプレッドがある | 細かい最適化が意味をなさない |
特に1行目の影響が大きいです。確率を5ポイント過大に見積もると、賭け金が1.5倍近くに膨らむことがあります。過剰賭けは期待値ではなく成長率を削るため、気づいたときには資金が大きく減っているという事態になります。ハーフケリーはこの誤差への保険です。
よくある誤用例
| 誤用 | 何が起きるか | 正しい考え方 |
|---|---|---|
| 推定確率を市場価格に合わせる | エッジが常にゼロになり何も賭けない | 独立に自分の見立てを先に固める |
| 「確信がある」ので金額を大きくする | 確信の強さは精度の証拠にならない | エッジの大きさで決める |
| ケリー比率を全資金に適用する | 生活資金までリスクに晒す | 取引専用の資金に対して計算する |
| 連敗後に金額を倍にする | 資金の減少が加速する | 減った資金に対して再計算する(自動的に小さくなる) |
| 関連マーケットを別々に計算する | 実質的な集中投資になる | グループ全体でリスクを合計する |
2行目は特に危険です。「確信がある」ことと「見積もりが正確である」ことは別問題です。情報が多い分野ほど確信が強くなりますが、市場も同じ情報を持っているため価格にすでに織り込まれている可能性があります。
実際の計算手順
- 取引に使う資金の総額を決める(生活資金は含めない)
- 対象マーケットの自分の推定確率を決める(市場価格を見る前に)
- 市場価格から純オッズ b を計算する
- 公式 f* = (b×p − q) / b に代入する
- 出た比率に 0.5(ハーフケリー)をかける
- 資金総額をかけて金額を出す
- 他マーケットとの関連を見て、合計が大きすぎないか確認する
- 記録し、結果が出たら推定確率の精度を検証する
この手順で最も重要なのは2番目です。市場価格を先に見ると、どうしてもその数字に引きずられます。自分の見立てを先に固めてから価格を確認する順番を守るだけで、判断の質が変わります。
よくある質問
ケリー基準は予測市場で本当に使えますか?
考え方としては有効ですが、そのまま使うには注意が必要です。予測市場では確定した確率が存在せず、参加者全員が見積もりを競っているためです。実際にはハーフケリー以下の保守的な比率で使うのが現実的です。
純オッズ b はどうやって求めますか?
市場価格をセントで見たとき、b = (100 − 価格) / 価格 で計算できます。例えば50セントなら b = 1.00、20セントなら b = 4.00 です。価格が低いほど b が大きくなり、当たったときの配当が大きいことを意味します。
ケリー比率がマイナスになった場合はどうすればよいですか?
マイナスは「その価格では期待値がプラスにならない」という意味です。この場合は賭けません。無理に賭けると期待値がマイナスの取引を重ねることになります。
ケリー基準を使えば必ず儲かりますか?
儲かるとは限りません。ケリー基準は「資金配分を最適化する」手法であり、予測が当たるかどうかは別問題です。推定確率に優位性がなければ、どんな配分をしても長期的には増えません。
どのくらいの頻度で見直せばよいですか?
各取引の前と、資金が大きく変わったときに見直すのが自然です。資金が減れば同じ比率でも金額が小さくなり、自動的にリスクが下がります。逆に増えたときに慢心して比率を上げるのが最も危険です。